宮崎あおい in 「星の王子さま」DVD

出てすぐ買ったもののまだ見ていなかった「星の王子さま」のDVDを見た。
とりあえず、これほど主役が歌を歌うシーンが少ないミュージカルも珍しいだろう。
芝居として冗漫で退屈なのは、去年新国立劇場で観て分かっていたので、
後半部分、あおいちゃんのシリアスな演技が見れるシーンを中心に見た。
結果的には、舞台で観たときほどの感動はなかった。
あの時はたまたま最前列だったので、「宮崎あおいの芝居を至近距離で観てる」
という興奮した意識が感動を水増ししていたのは明らかである。
最大の見所は、やはり最後に操縦士に別れを告げるシーンだった。
ここで王子さまが自分の星に帰らなくてはならない理由を説明する長い台詞は、
台詞というよりも一編の詩であり、非常に美しい。またあおいちゃんも、
この詩的な台詞の意味をよく理解して、言葉の裏に秘められた人生の暗い真実への
洞察と諦念を巧みに表現している。この表現力は単に演技が上手いという事ではない。
そこにはあおいちゃんならではの何か特別なものがある。それは何か?
あおいちゃんの芝居は、実は一種の煽動(アジテーション)なのである。
「みんなもっと真実を見つめようよ!」という煽動。この意味での政治的要素が、
蒼井優上野樹里、戸田梨恵香、上戸彩栗山千明といった同世代の演技達者な女優たちと
宮崎あおいとの本質的な差異ではないだろうか。なんとなくそんな気がする。
そういう自分の煽動者的資質と、あおいちゃん自身が今後どう向き合っていくのか。
私たちは、固唾を呑んで注視しなくてはなるまい。