翻訳雑感

あっちゃんとお別れするとすぐ、仕事にとりかかった。
と言っても会社の仕事ではなく、副業の翻訳である。
1社だけ登録してある翻訳エージェンシーから久しぶりに来た
英日翻訳の仕事は、原文の内容がなかなか面白かった。
ある独立行政法人の英語版Webサイトのリニューアルに伴い、
コンペに参加している制作会社が自分たちの企画を提案し、
同時に現行英語版サイトの問題点を指摘している文書だったのだが、
「テキストは日本語からの翻訳ではなくnative Englishにすべきだ。」
という提案が何度も出てきたのには思わず苦笑してしまった。
以前僕の上司だったアメリカ人が常々この点に関してグチっていたのを
思い出したからだ。もちろん日本語からの翻訳でも形式上はそれなりに
整った英文になるのだが、外国人が読むとやはり違和感があるわけで、
「外国人向けのサイトなのになぜ外国人に読みやすい英文にしないのか?」
と、その上司は怒るわけなのであった。もっともなお怒りだと思うのだが、
実際には日本の法人の英語版サイトのテキストは大半が日本語版サイトの
テキストの翻訳である。いわゆるグローバル企業でも大抵はそうである。
その逆の例がアップルで、日本人向けサイトなのにゴリゴリの翻訳調テキストを
堂々と載せ、それどころか最近ではキャッチコピーはそもそも翻訳さえしないという、
思わず拍手したくなるくらいのイカした英語中心主義ぶりである。
僕自身どちらかと言えば自己中心的な性格なので、こういう日米両陣営の
言語的自己チューぶりは適当に面白がることができるが、仕事となるとそうも行かない。
特にお役所関係の仕事では翻訳臭さは極力消しておくのが基本なので、
そのへんはちょっと神経質にならざるを得なかった。でもまあ、量が少なくて内容が
そんなに難しくなければ、英日翻訳はいつやっても楽しい仕事である。
一方、日英翻訳はいつやっても辛い仕事であるが、その話はまた別の機会に。