アップルストア集客強化プロジェクト

また新しいプロジェクトが始まった。今回のテーマは、Apple Storeの集客強化。
リアル/オンライン両方のApple Storeを通じた直販の強化はアップルの長期的な戦略だが、
どうやら着実に利益を生んでいるようで、日本でもまだまだ店舗は増えるらしい。
また、販売だけでなくサービスの拠点としてもストアを売り込むのが最近の傾向で、
今回のプロジェクトでもMacジーニアスやインストアイベントが改めて宣伝されている。
僕の仕事はいつものように英文コピーのローカリ。しかし今回はいつもと違う注文がついてきた。
「コピーライティングの要素を極力排して、英文の意味をとることだけに
専念する形でローカリして欲しい」という注文。要は、下訳に徹しろということだ。
聞けば、アップルから代理店の方に「お宅は全体にキャッチコピーが弱い」という
クレームが来て、今回は他社とのコンペになってしまったとのこと。
そこで急遽この代理店のエース級のコピーライターを投入することになったらしい。
んでそのエース氏が、「なるべく色の付いていないニュートラルな下訳が欲しい」
みたいなことを言ってるらしい。なるほど。この気持ちは僕もよく分かる。
僕自身はまだ下訳を使った翻訳をしたことはないが(たぶん一生使うことはないだろう)、
変なクセのある下訳が上訳の妨げになることは、仕事関係の複数の翻訳者のグチを通じて
聞き知っているので、ここは僕も要望通りクセのない下訳を提供したいところである。
問題は、USアップルの作ってきた英文自体が例によって高度に洗練されたコピーなので、
原文に忠実に訳していくと、日本語のほうも自然とコピーっぽくなってしまうことだ。
言い換えると、コピーらしさを消すためにはワザと下手に(ぎこちなく)訳さなくてはならない。
それもバカらしいなと思いつつ、部分的にそういう処理も試みておいた。
エース氏の言語感覚が全くわからないため、野球で言う「球を散らす」手を使ったわけだ。
実際は、たぶん、僕の段階である程度コピーライティング的な処理をほどこした上で、
それをプロパーのコピーライターがブラッシュアップする形がベストだと思うのだが、
面識もない下訳者のコピーセンスを信用しろと言ってもそれはそれで無理だろうから、
とりあえず作業の組み立ては向こうの判断に委ねるしかない。結局今日のところは、
「指示通りコピーっぽくなく訳しましたが、もっと原文のスタイルを反映した訳文が必要ならすぐ用意できます」という但し書きを添えて、早めに納品した。
明日どういうフィードバックが来るか、正直不安だが、このコンペにはぜひとも
勝ってもらわなくてはウチも困るので、最大限協力していくようにしよう。
ということで、エースさん、頑張ってください。なんならキャッチの訳案も出しますよ。