柳生みゆ主演ショートムービー「君と歩いた道」を観て

午後1時上映開始なので12時40分ごろ現地(品川プリンスホテル・クラブeX)到着。
意外にも長い行列が出来ている。聞けば、機材調整のため開場が遅れているとのこと。
客層は、若者カップルから中年家族連れまで、到って健全そうな人々ばかり。
ほとんどが浜田省吾のファンなのだろう。ヲタ濃度はゼロに近い感じだった。
会場内は正面に大きなスクリーンがあって、椅子がいっぱい並んでいる。
映画館というより上品なライブハウスといった感じの空間だった。
上映中に緊張を強いられるとイヤなので、一番後ろの端の席を取る。
映画は全体が『TWO LOVE〜二つの愛の物語〜』というタイトルで、
「キャッチボール」と「君と歩いた道」の二本立てになっている。
前者は時任三郎主演の親子愛もので、こっちが先に上映された。(約50分)
内容は非常にヌルく、耐え難いほどではないが、かなり退屈だった。
10分の休憩をはさんで、いよいよ「君と歩いた道」が始まった。
冒頭、広い田んぼと電柱と高圧電線の映像を見て、反射的に
『リリィシュシュのすべて』の、蒼井優演じる少女の葬列のシーンを思い出した。後でパンフレットを見たら、
監督の橋本直樹は『リリィシュシュのすべて』のチーフ助監督だったとのこと。
物語は、田舎の中学に通う主人公の少年が淡い初恋を回想する形になっており、
柳生みゆちゃんが転校生(中3)として先生と一緒に教室に現れるところから始まる。
自己紹介は名前だけ、ワケあり風の暗い影を背負った少女という役回り。
学校では誰とも付き合わず、下校もいつも1人。やがて、母親が
借金取りに追われて田舎に逃げて来た事情がわかってくる。
その母親の死によってみゆちゃんはまたどこかへ転校してしまう。
しかし数年後、少年とみゆちゃんは意外なところで再会し・・・てな内容。
はっきり言って、ストーリーはどうってことない。どうってことあるのは、
柳生みゆちゃんの演技のみであった。
みゆちゃんは「他の女子とはどこか違っていた」という役柄設定なので、
うますぎる詩の朗読で教室じゅうをシーンとさせてしまったりするのだが、
この朗読が「本当に」うまいのだ。また、制服のまま川の中に歩いていき、
振り向いて、「このまま行ったら、どこかへ・・かなぁ?」と悲しそうに
叫ぶシーンも、前後の脈絡とは関係なく、ただその演技だけで胸を打つ。
その他、全編にわたって、1人だけ高水準の演技を保ちつづけ、
その結果、主人公の少年を遥かに超える圧倒的な存在感を放ち続ける。
何より素晴らしいのは、「顔がいい」ということだ。
ちょっと前の「トップランナー」で蒼井優柳楽優弥くんのことを
「フィルムに愛されてる人」という言い方で称讃していたが、
この蓮實重彦的な賛辞は、この映画の柳生みゆちゃんにも完全に当てはまる。
とにかく、綺麗なのである。昨年の夏に撮影された『七人の弔』に比べると、
顔が微妙に、しかしはっきり大人びてきており、そのことによって、
可愛さよりも美しさの印象が強く残るが、それに何も不満はない。
しかも、声がまた綺麗なのだ。これはもう天性の美声。それも、
若い頃の長谷部優さんが持っていたような、歌うための美声ではなく、
芝居で美しい少女を演じるために天が与えた台詞のための美声という感じ。
好夏3』と『七人の弔』を見て、彼女の演技がうまいのは分っていたが、
ここまでうまいとは思わなかった。もしかすると柳生みゆは天才かも知れない。
天才は言い過ぎとしても、少なくとも逸材であることは確かである。
おそらくすでに何人もの映画監督が彼女に目を付けているだろう。
できることなら、加齢によって声の美しさが失われてしまわないうちに、
日本で一番才能のある映画監督および日本で一番才能のある脚本家と組んで、
柳生みゆ主演の映画が製作されて欲しい。そしてそれを観たい!


長谷部優ちゃんがイチ推しでなくなって以来、彩月貴央ちゃん、次いで
柳生みゆちゃんが自分にとっての暫定イチ推しであったが、今回この
「君と歩いた道」を観たことで、みゆちゃんが、暫定ではなく、
正式なもとすきのイチ推しになりました。めでたしめでたし☆